なぜ夫婦は離婚し、カップルは別れるのか。それはきっと文明が崩壊する理由と同じだ。

コミュニティ・メカニズム

「文明はなぜ崩壊するのか」という問いに出会って、はじめに参照したのはジャレド・ダイアモンド著『文明崩壊』でした。

文明崩壊と個人同士の関係の破綻は規模の違いでしかないのではないか。読んでるうちに思ったのは、これまんま個人の問題にすり替えても同じようなこと書けそうだな、ということ。

極端なことを言えば、人間同士のコミュニケーションの崩壊がそのまま文明の崩壊に繋がっているのではないかと思ったので、そんなお話をしようと思います。

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同じ原因を持っていても崩壊する文明とそうじゃない文明がある

文明が崩壊する理由は多岐に渡ります。

それらはいくつかにパターン分けできる。よくあるヤツってのがある。

ざっと分かりやすいものを挙げるとすれば、例えば「干ばつ」があったり、「疫病」、「資源の枯渇」、「貿易の問題」、「外敵の侵入」、「内乱」などなど。

大きなひとつのきっかけで崩壊が起こることもあるが、多くの場合複合的にこれらの要因が重なって崩壊へと至ります。

大まかに分類することもできるし、細分化していくこともできるけれど、文明が崩壊するにはそれなりの理由があるということだけは間違いないようです。

『文明崩壊』は実際に崩壊した文明のその原因を分析し、反対に栄えた文明を対照的に配置することで、なぜ文明は崩壊するのかという疑問に肉薄する本です。

著者のダイアモンド氏も書いていたけれど、大きな疑問は、これらの要因は確かに文明を崩壊においやるものではあるけれど、これらの要因を持っているからと言ってどの文明も崩壊する訳ではないのはなぜか、というところです。

何が原因で崩壊するかは分かるけど、崩壊する文明としない文明では何が違うの?ってところ。

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崩壊する文明はトラブルを乗り越えられない人間関係が作るのではないか

この辺りが人間の個人同士の関係の崩壊においても同じことが言えると思うのです。

例えばカップルや夫婦はなぜ別れるのか。

原因は多岐に渡るでしょう。

「不倫」、「金銭トラブル(貧困)」、「価値観や生活リズムの違い」、「相手の親とそりが合わない」、「第三者の介入でおかしなことになる」、「言葉の壁」、「世界観の壁」、あらゆるものが崩壊の原因となります。

だけどこれらの問題を緩やかに回避し、もしくはこれらに打ち勝ち成就し関係を維持する二人もいれば、傍から見ればそんなことで?と思われるようなことで崩壊する関係性もある。

その違いは一体なに?ということが分かれば、文明が崩壊する理由も分かるのではないかと思うのです。

どんな規模のコミュニティだって人間関係の集まりには違いないのだから、根本は同じはずだという考えです。

文明は考えないことを推奨する

ぶっちゃけて言えばどこだかの何文明がこういう理由で崩壊したっていう話は面白くはあるけれどあまりピンと来ません。

だったら恋人同士や夫婦はなぜ別れるのかという身近な規模の話の方が興味深い。

だから僕は『文明崩壊』をそのように読みました。ほとんど人間関係について考えながら読んでた。

でも一か所だけ、ちょっと長いけど引用したい箇所が。

カトリーヌ・オルリアックはこう言っている。「(イースター島民が)物心両面にわたって生存に必要な森林を、なぜみずから破壊しなければならないのか?」。 これこそ、まさに鍵となる疑問であり、カトリーヌ・オルリアックだけでなく、カルフォルニア大学のわたしの教え子たちにとっても、わたしにとっても、そのほか、みずから環境被害を招くという行為を不思議に思うすべての人々にとっても、常に頭から離れない問題だろう。 わたしはよくこんなふうに自問した。最後のヤシの木を切り倒したイースター島民は、その木を切りながらなんと言っただろうか、と。 現代の伐採業者のように、「これは仕事なんだ。木じゃないんだ」? あるいは、「テクノロジーが問題を解決してくれるから、心配はいらない。木に代わるものが見つかるさ」? あるいは、「もうこの島には木がないと証明されたわけじゃないんだから、もっと探してみないと。伐採を禁止するなんて早計だ。悲観論に踊らされているんだよ」?

ここから読み取れるのは「思考停止」です。

自分の頭で考えて、判断し、行動するという部分が欠如している。

やっぱり個人同士のやりとりにおいても、この類の思考停止は散見されると思います。

今までは恋人同士とか夫婦間のことを言っていたけれど、異性間に限らず、友達同士、子弟関係、親子関係、仕事関係などあらゆる場面に当てはまるのではないでしょうか。

思考停止と言えば馬鹿にしているみたいだけど、言いたいのは「問題に対する態度」の話です。

問題が生じたとき、このままじゃヤバいかな?ってなったとき、「立ち止まってよく話し合う」か、「手は止めずに突き進む」かで、そのコミュニティの運命は大きく異なる。

問題があったときによく考えて行動できるかどうかが、僕らのコミュニティーが崩壊するかどうかの境なんじゃないだろうか。

問題が共有できない。問題を直視できない

文明には、一番手近で、一番手っ取り早い解決法を僕らに選択させてしまう力があるのではないでしょうか。

以下の記事でも同じようなことを書いたのですが、目まぐるしい現代では、僕らにはとにかく時間がない。立ち止まりたくても立ち止まれないところがある。時間を節約しすぎてしまう。

モモを読む/現代の必読書『モモ』に学ぶ自分だけの時間の見つめ方

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問題はあくまでスマートに解決すべきものであって、考えるべきものでも時間を費やすべきものでもない。

それがもし、解決できない問題だったらどうでしょうか。問題を論じることが目的の問題だったら。

もしくは問題をきちんと共有するための問題と言っても良いかもしれません。

もしくは問題を共有した時点で解決するような問題です。

問題を共有するための問題とは?

例えば、男女間でよくあるのは(実際にあるか分からないけど)「私と仕事、どっちが大事なの?」とかがそうかもしれません。

また、言葉にならない、問題以前の不満や不安もあるでしょう。

それでも例のためにあえて言葉にすれば、細かな価値観や習慣のことなどです。

例えば一方は食事のあとはすぐに食器を片付けたいタイプで、もう一方は食後はゆっくり話でもして過ごしたいタイプだとする。

表面上仲良く食事を取っているように見えるけれど、一方はそそくさと食器を流しに置きにいくが、もう一方は席を立とうとしない。その後、お茶を淹れたりときには晩酌をしたりしてときを過ごすのだけど、食後すぐに食器を片付けるかどうかという点において微妙に異なる。

言葉にはしないでするまでもないと思っているけれど、互いになんとなく「使わない食器はさっさと片付ければ良いのに。食器に汚れがこびりついてしまうし……」「せかせかしないでゆっくりすれば良いのに。まだ食べるかもしれないし」と思うともなく思ってる。

ほとんどの場合は問題にならないしするほどのことでもないけれど、ケンカなどが起きたときに不満となって言葉になるかもしれない。

意識的に違和感を口にすれば「ああそうか、汚れが取りにくくなるのか。ごめん気づかなかった」となるかもしれないし、「そうかあとでまだ何か食べたくなるときお箸がないと面倒なのか。お箸と小皿だけは残しておくね」という解決法になるかもしれない。

大げさかもしれないけれど、コミュニティ間の問題が共有・直視できない状態というのはよくある。

また、いざ問題が顕在化したときには、それが間違っていようが、相応しくなかろうが、「とりあえずの答え」を僕らは選び、突き進むから、崩壊に至るということがある。

だって何かの拍子にケンカしたとき、こんな食事時のすれ違いにまで原因の一端を追求して、まずこのすれ違いから解決しよう、という話になりますか?ならないですよね。ほとんどが今現状お互いに怒りをぶつけることとか、一方の怒りをおさめることに集中することになる。

深く考えず、コミュニケーションも取らず、とりあえずの答えを探してしまう。

「とりあえずの答え」をなぜ選んでしまうのか?

考えることを放棄し、「とりあえずの答え」を選らばなければならない状況を考えてみると、いくつか思い浮かびます。

  • 「タイムリミットがある場合」
  • 「立ち止まって考えることができない場合」
  • 「単純に頭が悪く思考は及ばない場合」
  • 「疲れていて頭が回らない場合」
  • 「責任転嫁している場合」
  • 「不安やプライドが強く問題に直面することを避ける場合」

挙げだすといくつでもありそうですが、僕らは単純に怠けて考えることを止めたり、逆に計算高く自分を守るために考えるのを止めたりしてしまいがちです。

「とりあえずの答え」は、しばしば「投げやりに見えてしまう答え」でもあると思います。

とくに人間関係では。問題を投げかけて、その解答が投げやりだったりその場しのぎだったりすると、ただ問題を解決できない場合よりずっと致命傷になることがある。

問題を共有することこそが解決の手法たりえるのに、問題から目を逸らしたり、とりあえずの答えを携えて手を止められない心境にある人はその辺りに気づけなかったりする。

こういう個人の人間関係レベルのレスコミュニケーションが国レベルで起こると、文明の崩壊みたいな自体に陥るのかもしれません。

なぜ夫婦は離婚し、カップルは別れるのか。それはきっと文明が崩壊する理由と同じだ。(完)

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