パイナップルの花束を君たちに~大人になっても本質的に同じことしてたりする~(8)

前回のお話し→『パイナップルの花束を君たちに』~実体を知らないまま大人になるとどうなるのか~(7)

最初のお話し→『パイナップルの花束を君たちに』~彼らの大人になれなかった部分~(1)

アドリブ小説とは、僕は常に何とか一本のお話しを作ろうと努力しますが、時折挟まれるハル先輩のお題?に従って、内容を作っていかなければならないという遊びです。極端な話、「この回で終わらせて」と言われれば僕は終わらせる話を書かなければなりません。

よって先の展開は考えず、書く日に即興で話を作っていく…のですが、このパイナップルの話もそろそろ終わり時かなと思っているので、畳みにかかっています。

ドリンクバー全混ぜ→オリジナルカクテル→大人になって子どもの頃にやったこととの再会

「ところで、先生がたの部屋ってどこなの?」

「あーわかんないね。追っておけばよかった」

「じゃあまあとりあえず、先生がたの部屋を探す班と、パイナップルを隠す班に分かれよう。そして、部屋を見つけたらそのまま監視。これは各班が交代で行う。残ってる班は休んでても良いし、パイン食べる準備しててくれても良い」

大西がそう取りまとめた。

夜中になり既に眠かったこともあり、反対意見は特になかったが、眠気に耐えられない気がするという心配は何人かにあった。

蛍光灯のくすぶった明かりの下、今までに見たことがない夜の教室で、眠気と、おかしな義務感がせめぎ合う中、ぼそぼそと会話が飛び交っていた。

「休んじゃったら起きれなそうだなあ。」

「確かに。今日って徹夜ってことなの?」

「んーそれは避けたいところだよね。早くパインを食べてしまえればそれであとは好きにして良いんだろうけど」

「そうだよ、まあ、だから頑張ろう。さっさとパイン食べちゃおう。てか別にわざわざ隠さなくても良いじゃん。とりあえずここにパインはあります。食べます。終わり、で良いじゃん」

「いやそれはズルいんじゃない?一応、俺たちがどこかに隠す、先生方が探すっていう条件で引いてもらったわけだし」

「レクだしね、一応」

「めんどくさいね」

「めんどくさい」

「うん、ああそうだでも、先生たちに本当のパインの姿見せてあげたくない?」

「は?何それ」

「いや、あれは可哀想だよ。だってあの二人、ヤブサカ先生は分からないけど、パインの真ん中には都合よく穴が空いてると思ってるんだよ?」

「可哀想っていうか憐れだよ。パインの中身も分からないまま大人になっちゃったんだよ」

「ま、とりあえず家庭科室のカギ取って来るわ。誰か一緒に来て」

大西がそう言って、圭太が付いていった。

職員室には誰もおらず、家庭科室に限らず、どんなカギも自由に取ることができた。

奥の部屋に校長がいるはずだ、と一瞬考えた。

もう何日もあそこに校長が引きこもっているのだと考えると少しゾッとした。

本当のことだとは到底思えなかった。部屋の中はどんなにおいになっているんだろう。

そう言えば、先生方が順番で校長の食事とかの面倒見てると言っていたから、ヤブサカノウキンの二人はこの近くにいるに違いない。

宿直室みたいな部屋があるのか?いずれにせよ、大の男が二人で籠れる場所なんてあるのだろうか。

そんなことをぼんやり考えながら外に出る。教室の方とは反対の、校長室の方へ向かう。放送室があって、職員玄関がある、暗い方。

普段滅多に来ないから分からなかったが、何の部屋でもない部屋があった。正確には、入ったことがないドアがあった。

まあここだろうな、と二人は思った。

夜中にこっそり抜け出して、パインを探す二人。そういうの楽しいだろうなと思った。

悪いけど、そういうのは台無しにしてあげなくちゃ。

「いっそさ、みかんとかももとか白玉とか買ってきてフルーツポンチ作って食べない?」

「お、いいね。ジュースは何にする?」

「え、ジュース?」

「サイダー入れたり、カルビスソーダいれたりして作らない?かんづめの汁だけ?」

「へえ、私やったことない!てか今言われて気付いたけどウチでフルーツポンチなんて作ったことないわ」

「なんなら意外なヤツいれたいなあ。なんか、ツブツブのみかん入ってるジュースとか入れたら美味しそうじゃない?それにカルピスも混ぜる」

「いや美味しくないことはないだろうけどなんかビジュアルがくどいよ。ビジュアルがくどいよ」

「二回も言わなくていいじゃん。でも小さいときとかやらなかった?色んなジュース混ぜて飲むの」

「やったねー。たまに飲めないヤツになったりしたね」

「ぷ。何いれたの」

「そういやノウキン、トロピカルカクテルとか言ってたよね。何混ぜるんだろ」

「好きなもん混ぜるんだろうねー。やってることは大人もあんま変わらないよね」

「かんづめとかジュースとかの買い物誰行く?あーでも誰かお金持ってるの?」

「持ってないけど、途中で家帰って取って来るしかないんじゃね?俺ん家わりと学校からもコンビニからも近いし取って来るよ」

「それ以前にこんな時間にコンビニなんて行って大丈夫かな」

「んーあんま大丈夫じゃないかもね。ま、買い物行くときは父さんか誰かについてきてもらうわ」

「ごめんねユウト。お金あとでみんなで絶対返すからレシートちゃんともらってきてね」

「あーうん、わかった。ありがとう。それより誰かついて来てくれよ。一人はさすがに寂しい」

「あ、あの、じゃあ私が」

そう言ってすぐに立ったのは、ミサキという女生徒だった。

クラスのみんなはミサキを微笑ましげに眺めた。

「お、サンキュー。じゃあ行くか。それにしても、お金もないし、夜出歩くのも不自由だし、なんかこういうとき子どもだって実感するよな」

「今日は俺たちが大人だよ」

「まあ、校内に限りな」

彼らは、「校内では自分たちが大人である」という命題を少し気に入りはじめていた。

外見的な、もしくは法律的な子どもと大人の区別はあるが、大人として見られることで大人になるとき、大人としての目を自分に向けるとき、大人としての判断や振る舞いを自らに規定するという発見は、何となく、みんなの中に芽生えていた。

きっと校内にいる大人たちは、パインとか関係なく、ただ「子どもであること」を自らに許しているだけなのだろうと、大西あたりが思った。

パイナップルの花束を君たちに~大人になっても本質的に同じことしてたりする~(8)

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