こんな住む場所の選び方

多様なものを多様なままにしておくためには、価値基準や評価基準をできるだけ一律に定めないことが大事だと思う。

前回はそういう趣旨の記事を書いたのだけど、伝わっていないと思うのでもう少しライトに、かつ地域おこしとかってテーマによせて考えたいと思います。

スポンサーリンク
スポンサードリンク

通知表の見る場所が変わったような価値観の変化

例えば人生を考えたとき、それは十人十色であるはずなんだけど、実際に良き人生なのかどうかという客観的な評価は非常に限定的な基準に依りますよね。

ポーカーしてるみたいな感じで、これとこれとこれが揃ったから点数が高いみたいなところがあって、その配点はけっこう共通認識だったりする。

年収がいくら以上だとか、結婚しているかとか、子供がいるかというカードを一つ一つ集めて、それで以ってトータル何点以上だからあなたの人生は良い人生だと言えますという感じ。

でも、「良さ」って違うじゃん人によって。

それぞれ自分が集めたカードに何点をつけるのかは完全に自分の匙加減であって、そもそも点数をつけて数値化するという発想がナンセンスなものです。

いや実際には点数なんてついていないんだけど、やっぱり「幸せの条件」みたいな、幸せを構成するカードとして一般的に認められているものはありますよね。

一昔前であれば高収入に伴ってかなんなのか高学歴とかどんな資格がとか持家がどうとかどんな車に乗って、どんな時計を身に付けてるかみたいなカードが幸せの条件になったかもしれない。 最近はもしかしたらその辺が変わってきていて、いかに自分の自由な時間があって、かつ金銭的にも安定していて、家族に恵まれ、美味しい食べ物と仲間に恵まれていてっていう辺りが幸せの条件になってきてるかも。

バリバリの競争社会から逸脱して、素朴な競争になった感じ。

高級なとか贅沢なというモノに対する価値観が変わってきていて、お金をかけて得られるものから、感性を磨き、手間をかけることで得られるものに価値がシフトしてきた。

僕のイメージとしては小中でもらった通知表ってあったと思うんだけど、あれの見るところが変わったって感じです。

今までは算数とか国語とかで5とか4とかがいくつついてるかで競い合ってたけど、今はその横の「元気にあいさつすることができる」とか、「人の気持ちを考えて行動することができる」みたいな欄にいくつ◎がついてるかで競い合ってるような。

結局「いくつ良い評価があるか」って部分を競ってるから、価値観はシフトしても価値基準は変わってないなというイメージです。 結局評価はされるし、条件を集めることは変わってないのです。

個人の暮らしと地域のビジネスの混同が暮らしの価値を限定的にする

では良い地域の条件ってなんでしょう。

地域の活性はまだイコールで経済の活性みたいなところがあるし、景色とかそこで見られる動物とか、あらゆるものが観光のアイテムにされてしまう。

人が集まればお金も集まるから、移住者は欲しい、いつでも新しい風が欲しい。 地方それぞれの町が会社になってビジネスをしているようなもので、経済的な成功を目指すという部分が前提にある。

このような前提があるから評価基準や価値基準が限定されてしまい、結果的にどんな方法にせよ人が集まれば優れた地域、お金が稼げたらすごい地域ということになりがち。

最終的な良さは「経済効果」で判断しますよということです。

町とかはお金がないと困るからビジネスっぽくなるのは仕方ないんだけど、住む人の幸せや充実を営む現場が町のようなコミュニティなのに、人の価値観と箱の価値観にズレがありはしないでしょうか。

言ってしまえば古臭い価値観を大事にしている箱と、価値観のシフトを起こしている住民との摺合せというか、相互に妥協してる感じ、混同を憚らない様子に少し戸惑いを覚えます。

町がお金持ちなことと個人の幸せは関係ないけど、経済の有利さからは逃れられない

一人一人はその地域の経済力とかとは直接の関わりがなく、あくまで個人的な幸せ、個人的な価値観で暮らしてる。

仮に地元のお祭りに観光客が押し寄せて、経済効果がすごいことになっても、それで得られる恩恵って個人レベルではそんなに多くないはずです。

だから、地域の価値って言うのは個人的なレベルで言えば「家族との時間がたくさん取れる」とか、「新鮮なものを食べれる」とか「親切な人が近くにいて助けてくれる」とかセンシティブな、数値化できない項目になる。

田舎には、そういった素朴な幸せの条件に◎を付ける項目がたくさんあるから、最近注目されているのだと思います。

でも、結局生活と経済って直結してるから、やっぱり「いかに有利か」という点に帰結してしまって、上の◎が付く素朴な条件も、根底には「超過労働が少ない」とか、「都会で同じもの食べようとしたらいくらかかる」とか、「地域の人との繋がりはもしものときの保険」みたいな打算的な思惑があってこその価値でしょう。

もっと直接的なことを言えば、「田舎ならあまりお金がかからないから、このくらいの収入で十分暮らせる」とか、「保育や教育が充実してるから子育ても安心で、保育園に入れないとかもないし、補助金もあるしとても楽」とか、それこそ都会では4分の1カットのカボチャが300円近くするけど田舎来たら毎年ゴロゴロ何個も貰えるとか、そういうこともありますよね。

今まではバリバリの競争に勝って、経済力で掴みとっていた幸せを、これからは地の利の勝負で幸せの条件を掴みとろうとする。

それは十分競争的です。

現在では個人の発信力が高まってきて、それぞれが自分の地域の魅力を発信してると思うんだけど、地域の価値が結局「人生の幸せを得るための有利さ」の獲得に帰結してしまうのであれば、やっぱりこれまで通り盛り上がる地域は盛り上がって、盛り下がるところは盛り下がるという勢力のシフトが起こるだけです。

他の町を出し抜く算段を立てることになります。

そして田舎が魅力的なのは単純に、田舎がイージーモードだからだということになってしまいます。

こんな住む場所の選び方

なんか文句言ってるっぽくなっちゃったけど、別に何かをディスりたいわけじゃなくて、じゃあ何が言いたいのかと言うと、「幸せを構成する要件」ってヤツがもっと細分化できて、かつ絶対的になったら良いのにと思うのです。

個人レベルの幸せを得るためにいちいち競争しなきゃならないのがしんどいから。

「収入」とか「家の広さ」とか「家族との時間」とか「人との繋がり」とかってカードもそりゃ良いんだけど、そんなロイヤルストレートフラッシュみたいな誰が見ても価値のあるものも良いんだけど、幸せだって感じる瞬間ってそんな目立つものだけじゃないでしょう?

ましてやゲームじゃないし、算段とか計略とかにまみれてばかりじゃつまらないでしょう。

自分にはこれが必要だって思う条件ってもっと細かくて、人に理解なんか全然されなくて、むしろ口に出したら気味悪がられるようなフェチズムに富んだレベルだと思うのです。

数値化なんてされず、有利でもなく、ましてやお金にもならないことばかりが集まって、個人個人の幸せはできているはずです。

ということは、そこのところを大事にすれば、人に分かってもらえないレベルで幸せを達成できるのだから競争することなく、かつ満足度は高い状況を作り出せるんじゃないか。

選択肢を増やせば全体の満足度は上がります。

そば屋で満足できる人は限られていても、バイキングに行けばほぼ全員が満足できるのと一緒。

限定された価値は見えやすいし伝わりやすいけど、「好ましさ」なんて容易に口にできることではないのではないでしょうか。

幸せだと思わないまでも「うわこの感じいいなあ」と感じる瞬間というのはみんなあるはずで、しかもめちゃくちゃ細かいはず。

食の好み、住まいの好み、着るものの好みって本来そんな感じでしょう。

高ければ良い、高級なら良い、人気なら良いなんてもの、逆にとても少ないですよね。

個人ブログで表現できる地域の魅力は誰にでも分かる価値ではなく、フェティッシュな偏愛っぷり

僕はブログのような個人のメディアに価値があるとすれば、言わんでも分かるわってレベルの大ざっぱな価値じゃなくて、そんなフェチズムに近い好ましさを個人が表現出来得るところだと思います。

だって場合によってはここにこんな仕事があるとか、幼稚園の数とか名産品とかって言う生活の有利さ、条件よりも、「雨の日にどんな雰囲気なのか」という要素の方が大事になることもあるし、「夏にどんなにおいがするのか」が気になる人もいるでしょう。

雨の日は全体的にメタリックな気配になるよ、とか、雨上がりにはサイになった気分になるとか。

そういう風に住む場所を選ぶ日が来ても良いと思う。

そういう、検索できないキーワード、数値化できない条件で住む場所を選ぶ人が増えたら面白い思うし、そういう人たちに上手に空気を伝える媒体がもっと増えれば良いと思うのです。

評価を細分化することで、選択肢が広がると思うし、一度も足を踏み入れたことのない地域でも強くイメージできたりするかもしれず、細かい要件を満たしている程安心感は強く、フットワークが軽くなる可能性があります。

価値基準を限定してしまうと多様性は損なわれます。

無難な要件で生きる場所を決めることになるからです。

なぜ多様でなければならないと思うかは前回書いた。

多様なものを多様なままにしておくためには、条件や要素を細分化し、「経済の有利」のような大きな価値観で統一しないという方法を取る他ないんじゃないでしょうか。

※本記事は創造社会論第4回目の松川先生のお話を参考に書いています。 こんな住む場所の選び方(完)

スポンサーリンク
スポンサードリンク