理解とは創造的な行為だから、本気でやれば誰でも産む苦しみと産む喜びを味わえるはずだよ

前回の記事を書いていて、「理解するという行為はすごく創造的なものなのだ」ということをつくづく思い知りました。

文明に傾いた状態の今こそ、そのことは改めてよく考えておく必要があるのではないでしょうか。

そうじゃないと文明の波に飲まれて使い捨てられてしまう人間になると僕は思うからです。

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理解するというのは積極的な創作活動

理解するしないって受け身なイメージがあると思います。

しかし、理解というものは本当はもっと積極的な行為であって、産む苦しみを伴うもの。

具体的にどういう行為なのかと言うと、それは境界線を作る作業、名付けの作業です。

そもそも理解という言葉の“解”の字は、牛を刀でバラバラにするという行為に由来するものです。

分けると分かるというけれど、解の字も分けるという意味を持っているのです。(“分”の字にも刀がついてる)

つまり、物事と物事を区別し小さくすることで立ち向かう相手を小さくしていくのです。それが境界線を作るということだし、名付けをするということ。

感情を例に出せば、涙は悲しいときに出るものだと思うけれど、人は「悲しい」以外の感情でも泣きます。「悔しい」のかもしれないし、「怖い」のかもしれない。「切ない」とか「遣る瀬無い」気持ちになって泣くこともある。

どうして泣いているのかという単純な問いにも、明確に区切られた言葉がなければ答えることができないのです。

また、言葉(概念)は共有できなければ機能しません。切ないという感情を知らない人に切ないから泣いていると言っても一向に理解してくれません。

このとき、なぜ泣いているのかを本当に知りたければ、積極的な理解をしようという態度が必要になります。

切ないという言葉一つで理解ができないなら、状況を聞き、心の変化を辿り、相手の性格を鑑み、補い、新たに自分だけの概念を作らなければならないのです。

それが例え今後、便宜上「切ない」という妥協の産物で表現することになろうとも、自分だけの言葉というものは自分で作り出さなければならない。

これは大変苦しい作業なのですが、生まれたときからずっと、誰もが行っている創造行為なのです。

理解する作業と納得する作業は違う

さて、物事を理解したからと言って、それを全て持ち運べる訳ではありません。

地球上で起こる全ての事象に名づけを行って、すべてに枠組みを与えて頭の中にぶち込む作業ができたとして、それで地球全部が庭のようになり、人が全部よく見知った仲になったとしても、理解したものが自分のものになるワケではないのです。

地球が小さくなったと言えば、現代はすごくグローバルな時代です。

世界は狭くなり、距離の壁も言語の壁も大したものではなくなりました。

その気になれば自分の部屋にいながら世界のあらゆる出来事や経験、知識を得ることができるようになったのです。

これは明らかに文明の恩恵ですが、誰も世界の全部を知ってやろうという人はいません。いたとしてもできません。

なぜなら僕たちは理解をした上で選び取るという作業をしなければならないからです。

僕たちは精神だけの存在ではなく、邪魔くさい体を持って生きなくてはならない。

二所に同時に存在することはできませんし、正反対の論理を採用することもできないのです。

例えば、ここに人を殺してはいけないという人がいます。

でも一方で、どうして人を殺してはいけないのかと考える人がいる。

話を聞けば、牛や豚は殺されても構わないのに、人だけが殺されてはいけないなんて理屈は通らないと言う。

だから自分は動物と呼ばれるものを一切口にしない、と言えば、それはそれで正しい。つまり、人も動物も殺すべきではないという考えです。

また一方では食人の習慣のある地域や部族がいたりする。この人たちは人が通れば人を殺して食べるし、豚や鶏がいれば捌いて食べる。

命は平等であるし、食わなければ生きていけないから目の前にある命は食うと言えば、それはそれで正しい。

共食いはクール―病にかかる危険性があるから間違いなのだと言えばそれも正しいが、それは人類が発展すべきだという考えに基づいた論理なので、そもそもそこに興味がなければ説得力がない。

全てを理解したところで全てが自分の思い通りになるワケではないということです。

だからこそ僕たちは、理解した上で採用するものを決めます。

納得できるものを選ぶのです。

理解と納得は違います。

理をバラバラにするという作業と、それを納めて得る作業は別なのです。

文明を担う人間とそうでない人間

文明の時代です。

文明が進んで、地球は人間一人の頭にすっぽり収まってしまう程小さくなりました。

あらゆる情報が簡単に得られるようになって、分からない不快さというものはほとんどなくなりました。

今現在自分の知らないことは、自分に関係のないことか興味のないことであって、わざわざ苦労して理解するまでもないことです。

理解して、納得してという創造的なプロセスを経る価値があることなどそれほど多くはありません。

自分の世界に満足すればするほど、理解するという行為に必要性を感じなくなっていくのです。

だから当然、理解する力が衰えていきます。

ここからは大いに偏見なんだけど、人は歳を取るにしたがって、理解するということに対して傲慢な態度を取るようになっていくと思います。

それが例え人の感情であっても、自分より小さく、自分より経験が少ないと思われる人の感情はあくまで自分のそれよりも小さいと考えがちです。自分が知っている枠組みの外の話しをしているだなんて発想には至りません。

相手が自分が知っている言葉では処理できない大きな大きな感情を抱いているかもしれない(つまり苦しい創造の途中)なんてことは考えず、話を聞くことも創造の補助をすることもなく自分の小さな感情に当てはめて理解した気になってしまう。

本当は理解するという創造的なプロセスを放棄した怠け者で、自分の世界はここまでだと自分で見切りをつけて満足しているだけなのに、自分が理解できないものはないと思っている。

仮に理解できないものがあっても、自分が理解できたものの中に全て納まると考えている。

そこからはみ出すものは自分には興味がなく、関係がなく、関心がなく、理解する必要のないことだと思っている。

境界線を作る作業を繰り返して、世界が小さくなると同時に、自分が大きくなったという錯覚に陥ってしまう。

本当は理解しないのではなく、理解する力がないだけなのに。

月が見えたら満足さと望遠鏡を覗くことをしなくなっただけなのに。

「生きにくい世の中だ」とゴムの壁/剣淵の夜、前夜

宇宙の拡がりと文明の拡がり/宇宙と頭の中は似ているという話。剣淵の夜、後日譚

そんな人の前ではあらゆる世界が小さく圧縮されて、実際よりも矮小なものに成り下がってしまうでしょう。

大人になれば普通は理解力が高まっていくものだと思うけれど、実際は逆で、どんどん理解力は落ちていく。

その原因は単純な思考力の低下と、不遜と、行き過ぎた文明にある、と僕は思います。

現代文明は、とにかく人から時間を奪い、分かりやすさが重視されます。

素早く、端的に、分かりやすいものでなければ、理解というしんどいプロセスを経る思考的な体力も積極的な心構えも、時間もない人には絶対に伝わりません。

粘土ひとつ渡せばなんでも作れる子供とは違い、文明に飲まれて時間がなく、体力が奪われている人は型の一つでも与えてこれに詰め込んでゆっくり引き抜けば動物さんの模型ができますよと言ってあげなければならないのです。

そういう人は文明を消費するだけで、これからの文化やまだ発展するであろう文明を担う立場にはありません。創造力がないからです。

これから僕らはどのように理解するか

で、かくいう僕も自分が文明に飲まれているという心当たりはあるし、体とともに思考も老化しているという実感があります。

ここで諦めたらどんどん頭が悪くなって、もうすぐ使い物にならなくなる。誰にも必要とされなくなる。膨大な宇宙のことを考えている人の思考の一部分も理解できないつまらないヤツになる。

色々なことを簡単に割り切ったりすぐに鵜呑みにしたり場に飲まれて自分の頭で考える力をなくしたいてもいなくても変わらない人になる。

そうならないためにはどうすれば良いか。

そうならないためには、理解という創造的な作業を面倒くさがらずにやるということが大事だと思います。

いやだからそれをどうやって?と思うのであれば、早く答えが欲しいと思う悪い癖が出ていますよ!

文明に飲まれた人間特有の、楽して簡単に目標物を得ようと思う悪い癖が。

うそ。本当は具体的にどうすれば良いのか僕も分かっていないだけです。

事象を理解するって?概念を理解するって?そして人の気持ちや思考という大宇宙を理解するためにはどうすれば良いんだ?

その方法を試行錯誤していくことが、「文化的な土台」の第一ステージなのかなと考えています。

それに自分の力で理解したと自負することができたら、それまでのプロセスは苦しかったけどそれだけ嬉しさもひとしおだと思う。自分が見つけた世界をもっと大事にできるようになると思う。

ってくらい大事なことだと思うから、これからコツコツと考えて行こうと思います。

理解するという作業を理解するというメタ認知学的な見るからにめんどくさい作業ですよ。

時間がある人は付き合ってくれたら嬉しいですよ。

理解とは創造的な行為だから、本気でやれば誰でも産む苦しみと産む喜びを味わえるはずだよ(完)

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