生涯に読める本の数は限られている。
僕たちが与えられている時間に対し、世にある本の数は多すぎる。
読みたくない本を読む時間も、つまらない本を読む時間もない。
とはいえ誰かが面白いと太鼓判を押した本ばかり、餌を与えられる雛鳥のように飲み下しているのではあまりに味気ない。
誰かの感性に従うだけではなく、あなたはあなたの感性を、他ならぬ読書によって培うことができる。
あなたが次に読むべき本に出合うための七つの習慣をご紹介する。
Contents
1 図書館を上手に利用すること
無料で蔵書が読み放題。最近はやりの定額制ですらない。使わない手はない。
図書館はいつも読書の道の強い味方。
タイトル、表紙、厚み、まとう空気感。気になった本があったらまず手にとる。良書と出会う確率が高まる。
図書館では食わず嫌いをする必要がないし、予算を考えて本を選ぶ必要もない。
少しでも読みたいと思った本は手に取る。
ただ、有料、無料だけでサービスの価値を図ってはいけない。
図書館の存在意義は僕たちの「知る自由」を保障している、という点にある。
図書館は僕たちに知る自由を保障してくれている。
ときには読んだ小説の舞台となる土地や基本的な知識を参照する必要が生じることがある。
知れば知るほど面白くなるのが読書の醍醐味でありますから、この本を楽しむにはこの知識が必要だ、という事柄が自然に生じてくる。
何を知ろうとするかは自分で選ぶことができる。
どのくらい知ろうとするかも裁量が委ねられている。
図書館は知ろうとする人の強い味方。
2 ネットを上手に活用すること
知へのアクセスという観点では、図書館よりネットを使う方が良いと感じる方も多いかもしれない。
確かにネット上に公開されている情報は豊富であり、手間もかからず、素早く目当ての知識に到達することができる。
一方、誰かに咀嚼された情報であることが多いことも頭に入れておく必要がある。
つまり加工品である可能性が高いということ。
あなたがするはずだった咀嚼という努力を、他の誰かがしてくれて、自分の力でかみ砕く必要もなく、適当な味付けもしてくれて、ただ口をあけて待っていれば良いだけの情報になっていることがある。
次に読むべき本を効率よく教えてくれるかもしれないし、今読むべき本を教えてくれるかもしれないけれど、それは誰かが恣意的に決めつけた情報かもしれない。
易きに流れるのは人の性とは言え、そのくせ、多くのことを知った気分になりやすいのもネット上にある情報の特徴。
振り返ってみれば自分の頭には何も残っていない、という状況に陥りやすいことを頭にいれておくべき。
3 あとがきと解説まで読むこと
作者によるあとがき、翻訳者によるあとがき、そして解説。
読める本の量は限られているから、これらを読んでいる時間がないという人も多いかもしれないけれど、本編のおまけのようにくっついているこれらが次に読む本を探る手掛かりになることがある。
作者が影響を受けた作家の話、過去作の紹介、一読して気づかなかった物語の核心的なシーンなど、物語を理解する上で重要なヒントが書かれていることが非常に多い。
この本とあの本の繋がり、あの本とあの映画の繋がり、あの本とあの事件の繋がり。
本はつながっている。知識は続いている。
作者は多くの場合何かに影響を受け、何かを意識している。
作品が気に入ったら、作者の創作のルーツやこだわりを探ることで、自分の興味と嗜好の特徴を言語化するのに役立つことがあります。
4 自分に合わない本は捨てる勇気を持つこと
人間の第一印象は一秒以内に決まり、その印象が変わることはあまりないと言われるけれど、本にも同じことが言える。
一瞬で好きな声、嫌いな声を判断するように、一瞬で好きな顔、嫌いな顔を判断するように、本にだって印象があり、合う、合わないがある。
人が書いているのだから、仕方ない。自分に合わない人がいるように、自分に合わない本は残念ながら存在する。
買ったからには、選んだからには読み切らなければならないと考える必要はない。あなたに読まれる必要がある本はまだまだ星の数ほどある。
冒頭を読んで引き込まれないのであれば、その本は最後まで苦痛を強いる可能性が高い。
読んでいても喜びを感じない本なのであれば、今読むべき本ではないと決めていったん手放す勇気も必要。
それでも気になるならまた気になったときに再チャレンジすれば良い。
一つ本をあきらめたら、また別の本を選ぶ。
5 現実にも興味を持つこと
読む年齢や経験してきたことが読書の質に影響することはしばしばある。
10代のころに分からなかったことが、20代になって分かることがある。
20代のころに分からなかったことが30代に、30代で分からなかったことが以下略。
あなたが蓄積してきたことに呼応するように、本は、それぞれのテキストは、あなたの思考に染み入ってくるようになる。
歴史、地理、科学、言語、恋愛、娯楽、犯罪etc。
どれもこれも、知っていれば小説が数十倍面白くなることばかり。
小説はフィクションで、フィクションは現実よりずっと魅力的だけど、現実ありきということを忘れずに、現実にも興味を持つことが、新たにあなたが読む本に出会うために必要な要件。
6 ブッカー賞だけは信頼して良い
芥川賞も直木賞も本屋大賞も無視して差し支えない。ブッカー賞は面白いものが多い。
7 いつも少し背伸びをすること
今あなたが読める本ばかりが読むべき本とは限らない。
少し意味が分からなくても、難しいと感じても、読みたいと思うなら、読み進めることができるなら、最後まで読んでみて損はない。
たとえ読んでいる端から意味が失われていくような作品でも、今読めるなら読んでおけば良い。頭に何も残らなかったとしても経験は残るし、あとで解説を読んだり論文を読んだりするときに一気に理解が深まるということがある。
何より自分にとって難しい本を自分の力で読んだという経験は自信になり、その読書の経験を経なければ手を出さなかった本の存在と出会うことがある。
自分のレベルに従って、いままでずっとそこにあったはずのあの本もこの本も、まるで今生まれたばかりというような顔で、不思議とあなたの目の前に姿を現すようになる。
コメント