【どうやって、ここまで来たの】鹿角アクセサリー作家の作り方

どうやって、ここまで来たの

今まで縁があってお知り合いになれた人の中には、「この人はどうやってここまで来たんだろう?」という興味を持って、つい根掘り葉掘り色々なことを聞いてみたくなってしまう人がいます。

自分には想像のできない生活をしている人。

同じ道を目指そうと思ったからと言って、どうすればそうなれるのかが全然分からない人。

僕にとって、ヤマザキテッペイさんもその一人。

鹿角を使ったアクセサリーや雑貨をデザインし販売して暮らしている、旭川在住の職人さんです。

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縁あって数年前に出会い、出身地が近いということもあって折に触れて僕と会ってくれる方の一人なのですが、現在クラウドファウンディングサービス「CAMPFIRE」にて、エゾシカの角を使ったホイッスルのブランド支援を募っております。

 

※チャレンジ終了いたしました。ご協力ありがとうございました。

 

蝦夷鹿の角を使ったホイッスルを買ってブランド支援

鹿角 ホイッスル

拡散力の乏しいメディアなので宣伝、という訳ではありませんが、「この人はここに至るまでにどういうことをしてきたのだろう?」という僕の疑問に答えていただく形でお話しを聞いてきたので、この記事を僕なりのヤマザキテッペイさんの紹介に替え、少しでも支援の機会に関わることができたらなと考えています。

Contents

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「失敗したらどうしよう」を越える、バンジージャンプを飛ぶような勇気

個性的な生き方をする人は、ときに人の好奇心を掻き立てもしますが、またときには少なからず偏見にも晒されるものだと思います。

この人はきっと周りの目なんか気にせず、敷かれたレールに乗るようなことをせず、これまでずっと個性的な選択を続けてきた人なんだろう、なんて。

テッペイさんは、鹿の角を使ったアクセサリーを自分でデザインして作り、ブランドにまで磨き上げ生計を立てているのですから、少なくとも「ごく普通で平凡」とは言えない人生を歩んでいます。

しかしそんなイメージに反して、テッペイさんは人目をずいぶん気にする、ことによると人一倍気に掛けるタイプなのだそうです。

今回のCAMPFIREでの挑戦も、「バンジージャンプを飛ぶような気持だった」と言います。

当たり前かもしれないし「失敗なんてない」とも思ってはいるけどやっぱり「失敗したらどうしよう」って気持ちはあったし、すごく怖い気持ちもあった。

根本的な性質のことを言えば、テッペイさんにも「ふわっと全体に良くみられたいという気持ち」があって、「人の期待に答えたくなるし、そういう風に人が求めているものを用意するのも楽しいんだけど、それは多分70%くらいの楽しさで、100%楽しい訳じゃないかもしれない」というところがあるのだそうです。

どんな仕事をしていても、いや仕事に限らず人と関わるときは、相手の満足度と自分の中の満足度との折り合いをつけながらやるものだと思います。

だから、「自分の作るものに対して支援を募る」という、ある意味「強く我を張る」ことになるCAMPFIREでの挑戦は、それ自体がテッペイさんにとっての一つの壁で、成果以前にプロジェクトを立ち上げられたという部分で、一つ越えた感覚があるのだと言います。

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個性が個性に会うためのプロジェクト

今回テッペイさんが募る支援の対象は鹿角を使ったホイッスルです。

鹿角 ホイッスル2

このプロダクトを通して、ブランド支援にご協力していただける人がいたらぜひ手を挙げて欲しいというもの。

プロジェクトの詳しい内容は以下の画像リンクからどうぞご覧ください。

「今回はホイッスルだけなんですか?」と僕は聞きました。

というのも、テッペイさんはこれまでにも鹿の角を使ったプロダクトをたくさん制作しているし、僕のイメージではCAMPFIREなどクラウドファウンディングでのリターン商品にはバリエーションを用意し、小刻みに支援金額を設定することで、目標達成の確率を上げるという方法を取る方が多いと思っていたからです。

そもそもこのホイッスルの誕生に関わる話をすれば、これまでの作品制作の過程ではあまり使用されることのなかった鹿角の先端部分から新たな価値を生み出そう、という意志が先にあって作られたものなのだそうです。

だから今回の軸はあくまでホイッスル。

ブランド支援とは言いますが目標金額も比較的控えめな設定だと思いますし、鹿角の、笛型のアクセサリーというニッチな商品ですから、必要なのは資金よりも「作品に加えた価値に反応してくれる人はいるだろうか」という、テッペイさんの職人としての個性と、鹿の角一つひとつの個性を生かした作品に呼応する人との出会いが重要なのだと思います。

「商売」以前。アルケミストと旅をして

ところで、この記事の本題。

テッペイさんは一体どうやってここまで来たのでしょうか。

そもそもいつ鹿角でアクセサリー作って仕事にしようと思ったのか。

思ったとしてもどうやったら実際にそれを売り、生計を立てるまでに至れるのか。

そういうことって考えてもあまり分からないし、社会的に整備されている進路ではありませんよね。だからこそ僕はそれを聞く必要があるし、伝える必要があるのかなと思います。

そもそも鹿角に興味を持ったのはどうしてかと聞いてみると、きっかけはある鹿の角を使ったアクセサリーとの出会いがあったと言います。それが格好良くて、単純に好きだった。

ちょうどそのあと鹿の角がちょっと手に入ったから、削ったりしてアクセサリーを作ってみたら、自分の指にぴったりの、気に入る作品ができた。

天然石なんかも好きだったから、石と鹿角を組み合わせて、少しずつ作品を作る量も増えた。

その当時にはお店を持つとか自分のアクセサリーを売って仕事にしようとは考えていなかったのだそうです。

しかしその後、ある占い師さんの前でふいに、「何か商売をやりたい」と口をついて出た日があったと言います。

「すごく向いてるよ。でもその前に色んなところを旅して、いっぱい仕事しなきゃね」

その後その占い師の方はテッペイさんに『アルケミスト』を贈ってくれたそうです。

アルケミスト―夢を旅した少年 (角川文庫―角川文庫ソフィア)

占い師さんの言葉と『アルケミスト』の哲学に沿って、それまでのどちらかと言えば大人しい生活スタイルを抜け出し、テッペイさんはたくさんの旅や仕事を経験します。

必然的に様々な経験や出会いを重ねるようになりました。

 合理性としがらみから離れる

ちなみに、僕とテッペイさんとの出会いはある季節労働のバイトでのことでした。

テッペイさんにとってそこでの仕事は二回目で、その頃にはもう、ネットショップで2年ほど働いた経験を活かし、自分の作品と、出店で出回った先で出会った他の作家さんたちの作品を置く、セレクトショップのようなネットショップを作っていました。

季節労働のバイトが終わってからも、テッペイさんとは繰り返し会う機会がありました。多分半年毎くらいにだけど、その度にテッペイさんの周囲の状況は変わっていて、悩んでいたり、波に乗っていたり、とにかくいつも旅の途中という感じがする人です。

リターン4

いつだったか家に遊びに行ったとき、テッペイさんは猟師の免許を取るつもりだと言っていました。

それまでは猟師さんから角を譲ってもらったりしていたけれど、その頃はなぜか手に入る角が少なくなっていた。

「停滞」していた時期だったようです。

今になって思えば、当時は鹿の角が巡ってこない状況にすごく焦りを覚えていたし、猟師の免許をとって、猟師さんとの距離を近づけようと考えたのも打算的だったと言います。

免許取得のための費用を振り込めば家賃を払うのが遅れるという状況でしたが、テッペイさんは免許取得にチャレンジします。

しかし残念ながら試験には通れなかった。

これはあくまで僕から見ての推測ですが、焦りや不安に駆られてもっともらしい行動を取ることに、迷いのようなものがあったのだと思います。

ここは難しいところで、テッペイさんにとって鹿の角が手に入らないことは死活問題だから、多少の支払いの滞りがあっても、安定のために自分で鹿角を取れるようになろうと考えるのはごく自然で、その費用も必要な投資なのだと思います。

自営業者にとっては合理的な判断だったのかもしれません。

しかしテッペイさんには合っていなかった。逆にそういうもっともらしい方策がしがらみになった。

結果的に、猟師は諦めようと思った途端にまた角が入ってくるようになって、自分はやっぱり作る側の人間なんだと納得できたそうです。

安定もしがらみになる

物事を無難に保とうとしたりすると、自分を削らなければならない場面が必ずあります。 

それは当然のことだし、悪いことでは決してないんだけど、自分の感性にそぐわないことをすると苦しくなることはあるのはみんな同じなのではないでしょうか。

僕たちには常に人との関わりとか、社会との関わりがあって、自我と周囲とのバランスを取りながら生きています。

そういった関係はときにバランスを崩して「しがらみ」になってしまいそうになるときもあると思うんだけど、僕らにはそのしがらみを手放したり、捨てたりすることが難しい(だからこそしがらみなんだけど)。

これもあくまで僕から見た印象の話ですが、猟師免許を取ろうと考えていた時期のテッペイさんは、生活が安定し始めていたのではないかと思います。バイトをするより、作品作りに没頭した方が良い時期だったという印象がある。

それは喜ばしいことですし、是非保ちたい状況でもあると思います。

しかしそういった「無難」を保とうとすると僕らは停滞してしまうこともあって、窮屈さを感じてしまうこともあって、ときにはそんな「守るべき境界線」のために自らを削らなければならないこともある。

選択の幅を狭めるものはすべて「しがらみ」だと言い切るとすれば、安定を保とうとする常識的な判断もまたしがらみになることがあるのかもしれません。

テッペイさんのお話しを聞いているうち、ふと思ったことがあります。

それは、その人は誰かより多くのものを持っているから個性的なのではなくて、自分の感性を保つために色々なものを捨てることができるからこそ個性的なのかもしれないということ。

テッペイさんと鹿

「こうしなきゃならないっていう思い込みを、ゆっくり時間をかけて捨ててきたかもしれない」とテッペイさんは言いました。

僕たちはときに「こうしたい」より「こうすべき」で物事を選択することがあります。

常識的であるとか合理的であることはとても大切で、それは確かに正解に近いかもしれないけど、停滞を招くこともあるし、硬直を引き起こすこともある。

例えば伝統的なものや儀式的なものであれば、型に則り、基本を守ることが重要でしょう。言い方は悪いかもしれませんが、「自分の感性を優先せず、自分の頭で考えない方が良いこと」が、世の中には絶対にある。社会に通念する行動をとるべきときがある。

しかし僕らの人生は伝統に則るものでも、型が決まっているものでもありません。時代に合わせ、個性に合わせ、それぞれが自分の頭で考え、道を選び、カスタマイズするものであります。

テッペイさんの仕事と作品

テッペイさんの仕事では、鹿角のそれぞれが持つ個性をじっくり観察し、どの部分をどのように使えば一番格好良いかが考えられています。

鹿角 作品

CAMPFIREでのプロジェクトに関する文面を一部引用させてもらうと

簡単に角で作るといっても何百本何千本と角を切って作ってを繰り返しだんだんと分かったのですが、骨粗しょう症のように、スカスカなもの、黒ずんで綺麗でないもの、僕たちの歯や爪みたいに様々なんです。それは鹿の健康状態や栄養状態などによるもの。地域によっても全然違います。装飾品にするような真っ白で上質な角はなかなかでません。

ですが、その違いをそれぞれの商品のメリットとして活かせる方法を考えて、出来るだけ余す事無く使うことを強く意識しています。今回の笛も、使い切れずどんどん溜まる同じ部位のパーツをどう活かして供養するかを本気で考えて生まれたプロダクトです。

とあります。

鹿角を使ったお土産品やアクセサリーは珍しくありません。きっとお土産の場合高価にしすぎる訳にはいきませんから、鹿角の欠片を持ち帰る感覚で買えるキーホルダーなどは一定の需要があるのだろうし、それがずっと続いてる。

それが悪いというのではないんだけど、鹿角って本当はもっとカッコいいんだから、それぞれ全然違うんだから、その角の一番カッコいいところを引き出して、カッコいいと思う人に受け取ってもらって、自分の感性に沿う形で身に付けて欲しい、ただのモノじゃなくて命なのだから、という想いが強くあるように、テッペイさんの仕事ぶりや言動からは見受けられます。

そしてその想いが実際に伝わる人がいて、写真なんかを見せてもらうとそれを身に付ける人にはそれがとても似合ってる。何よりテッペイさんに似合うし、テッペイさんの部屋にある鹿角のフックや、愛犬マリリンのくわえる鹿角のガムも素敵に面白く部屋を彩っている。

鹿角の削り方と僕らの個性の磨き方

テッペイさんが手に取る鹿角の個性の引き出し方は、僕たち一人ひとりの個性の引き出し方とすごく似ていると思います。

みんなそれぞれ全然違って、キレイなばっかりじゃないし、形もそれぞれ独特だけど、どこを見せるかを決めたり、どこを残すかを決めたりしながら、一番自分に相応しい形を考える。

きっと僕らは均される。常識や合理に沿って、もしくは人目を気にする余り自分の自分らしいところをうまく表せず、本来もっと独特なハズの、自分にとってのマークのようなものを削り取られて、横一列に並べられてしまう。

そういうことが絶対にある。

それはやっぱり悪いと言い切ることはできないけど、それで苦しくて窮屈な思いをするくらいなら、しがらみを捨てて、占いに頼ったり、本に影響されたりでも何でも良いから、きっかけを掴み、勇気を出して、自分の感性に従う道を選ぶことも大事。

これはテッペイさんが実感していることでもあるらしいけど、捨てたらその空いたところに絶対何かが入ってくるし、求めたものが必要な分だけ入ってくる。

手に取る鹿角はそういう風に増えて行ったと言いますし、そういう風に新しいプロダクトが生まれることもあるのだそうです。

ちなみになんだけど、『アルケミスト』は名著。

おまえが何かを望む時には、宇宙全体が協力して、それを実現するために助けてくれるのだよ

この一節は僕も大事にしていて、アルケミストはこの文を読みたいがばっかりに何度か読み直しています。

最後に。ご支援のお願い(チャレンジ終了いたしました。ご協力ありがとうございました)

モノだけではなく、人との出会いも空いたところに入ってくることがあります。

しがらみを捨て、我を張って生きてみれば、それが気に入らない人もいるかもしれないけれど、「それでも良いよそれ好きだよ」って言ってくれる人も絶対にいる。

テッペイさんが今募っているブランド支援ってそういうことなんじゃないかと思います。そういう人に少しでも多く出会うためのプロジェクト。

個性や、誰かの思惑を削り取るのではなく磨き上げるためのプロジェクト。

 

蝦夷鹿の角を使ったホイッスルを買ってブランド支援

 

自分のこと応援してくれる人って強く望まなければ出会えないし、何かを強く望むということはしばしばそれ以外を捨てることでもあって、それには大変な勇気がいります。

簡単に出来ることではないけど、テッペイさんは折に触れてそういう決断をしてきたということが分かりました。

仮に誰かが「アクセサリー作家」を目指しても、この記事が参考になるとは思えません。テッペイさんの道はテッペイさんにしか歩けないわけだし。

でも「自分がしたいこと」とか、「100%楽しめる何か」とか、そういう漠然とでも目指したい行先のようなものがあるなら、テッペイさんから聞いた話とテッペイさんの仕事の仕方、選択の仕方には参考になるところがあるのではないかと思います。

ぜひ一度プロジェクトに目を通していただき、今後この人はもっと面白いものを作ると感じた方は応援の気持ちを込めて、ご支援いただけたらと思います。

※追記
チャレンジ期間は終了いたしました。ご協力ありがとうございました。

今この記事をご覧になった方も以下のリンクなどでテッペイさんのお仕事にご注目いただけたらと思います。

インスタグラムアカウントはこちら

【どうやって、ここまで来たの】鹿角アクセサリー作家の作り方(完)

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