出産後の不機嫌と妊娠中の浮気について。社会に選ばれる本能、隠れ蓑としての本能。

コミュニティ・メカニズム

ふと、本能というのも社会に選ばれるものだよなと思ったのでメモしておきます。

きっかけは妻の妊娠でした。

妊娠したとなると多くの経験やアドバイスをいただく(というかこちらが神経過敏になって情報が耳に入ってくる)ことになるのですが、その中に

「子どもを産んだ後は奥さんの気が立つことがあるから気を付けてね」

というアドバイスや

「出産してから旦那が気持ち悪く感じるようになった」

という体験がありました。

親猫の気が立って攻撃的になるようなことが、人間の女性でも起こることがあるそうです。

自分の子を守ろうと思えばこその本能的な反応で、いずれにせよ少し時間が経てば元に戻るはずだけど、その、気が立っているときにいかにサポートできるかが後々の結婚生活のためにも大事、というような話。

実際に「子どもを産んでから旦那と一緒にいるのが嫌で、できるだけ顔を合せないようにしてる」、「私の子に触らないで欲しいと思うこともある」と言っていた友人もいたため、「ああ、覚悟しなければならないな」と思ったと同時に、その本能はわりと許されるタイプの本能なんだなあ、と思いました。

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女性の母性本能と男性の次のメスを目指す本能

というのも、僕の個人的な感覚として正直「妻の妊娠中に浮気をする男性」の気持ちも分かるなあ、とも思った瞬間があったからです。

妻には「妊娠してからあまり近寄ってこなくなったよね」という風に言われることもあったのですが、確かに、無意識にしてもスキンシップの量が減っていることは間違いないように思います。

妻に対して、女性としての関心が以前よりも薄れていることはどれだけ言い繕っても間違いがない(そもそも、この関心度というのは波があるものだと思うけれど)。

「確かに、今もし仮に、近くに好みの女の子がいて、相手も僕のことを好きな様子だったら、誘惑に負けてしまうような状況かもしれない」と妻と話しました。

不倫なんてするメリットがないしそもそもそんな機会も、そんなことに割く時間もないと考えていた僕が、「別の女の人がいたらどうなるんだろう?」と考えるくらいには、本能的に「次のメス」に意識が向いたのだと思い、ちょっと驚きました。

しかし、この男性的な本能は決して社会的に、少なくとも一般論としてケアされるべきものとしては扱われない。

もしかしたら「妊娠前と後を比べると妻に対する性的な関心が薄くなった」とか「妊娠中に浮気をする男性の気持ちが分かる」と口に出すことすら(どんな文脈でも)許されることではないのかもしれない。

実際、この記事書くのもけっこう勇気を出しながら、慎重に書いているつもりですが、一定数の反感は得るものだと感じます。

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社会に許される本能だけを発揮できる

もちろん、それが本能的な反応だからと言って、仕方ない、他の女性の元へ行って良いはずだ、と言ってるわけではありません。

本能の問題なのだから、自然な感情だから、という風に浮気や不倫を肯定するわけでもない。

出産後の女性は気が立っているからと言って暴力をふるって良いわけじゃないし、暴言を吐いて良いわけではないのと同じです。

人間も動物だからある程度本能に操られるところがあるのは仕方ないけれど、越えちゃいけない倫理の壁がある。

この記事で言いたいのは、その倫理の壁は社会的に設定されている、ということ。

本能のままに振る舞ってよい行動というのは、社会によって規定されている。

男女問わず、一定を超えると社会によって罰せられるようになっている。

そもそも本能なんてない?

ここまで本能の話をしておいてなんだけど、しかしそもそも「本能」って言葉はもう専門的には使われることがないみたいです。

ウィキペディアで本能の項を見ると以下のように書いてあります。適当に引用します。

本能(ほんのう)とは、動物(人間を含む)が生まれつき持っていると想定されている、ある行動へと駆り立てる性質のことを指す。現在、この用語は専門的にはほとんど用いられなくなっているが、類似した概念として情動、進化した心理メカニズム、認知的適応、生得的モジュールなどの用語が用いられる。

本能の語が用いられなくなった理由のひとつは、これが説明的な概念としてはあまり役に立たなかったためである。特定の心理や行動を本能だと述べても、その行動の神経的・生理的・環境的原因(至近的原因:これらが伝統的な心理学の研究対象であった)について何かを説明していることにはならない。

そもそも僕らがそのときそのときのコンディションによって促される「情動」や、色々な要因が重なった心理的な変化を本能という便利な言葉を隠れ蓑にして正当化していたところがあるということ。

僕も単純に欲求不満だっただけなのかもしれないし、たまたま性欲の低下を妻の妊娠と結び付けて「これは本能的な反応だ」と説明しただけかもしれない。

何より、こうは言っても僕が他の女性を目指して具体的な行動を取ることはないことからも、本能なんてないよって言われた方が納得感がある。

本能を別の言葉で説明すれば違う顔が見えるかも

翻って、出産後の女性の気が立つという現象も「本能」で説明して、納得するわけにはいかない。

ホルモンバランスの変化による情緒不安定、はあるかもしれないし、その場合苛立つのはある程度仕方ない。

妊娠・出産を経てホルモンバランスが変化するのは当然だし、その後の育児にあまりに労力がかかるため栄養不足や寝不足が続くということになれば苛立ちはなおさら。

女性ほどダイナミックにではないにしても男にだってホルモンバランスの変化というのはあって、無性に苛立ったり落ち込んだりすることはあるからこれが仕方ないのは分かる。

しかしそれならば、旦那にだけ集中的に攻撃的になってしまう、という「本能」で説明されがちだった行動もちょっと見方が変わってくる。

そもそも子を守る本能が本当にあるのだとしたら身内以外の人間の方にこそ攻撃的になってしかるべきだと思う。

ということは、信頼しているパートナーだからこそ安心して不機嫌さや過敏さを発揮できる状況である、という見方をする方が納得感がある。

しかし、「本能」という言葉があることでその傾向に開き直りがあって、行動が加速している可能性がある。

つまり、多少の苛立ちや不快を、普段ならば倫理的に抑えているけれど、「本能的な行動」だからというエクスキューズがあることで、半分意識的に抑えなくなる。

だからなんだ、という話でもあるけれど、「本能」の扱いには気を付けなければならないなと思いました。

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