【ヤンセン主義】単語を浅くでも良いから調べる『めくるめく世界』

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ブロッホの『ウェルギリウスの死』とかベケットの『モロイ』とか、そういうのを読んでるとき

一文一文、単語の一つひとつは読めるし意味が分かるのに、読み進めると全体で「これなんの話してんの?」みたいになる不思議を味わった

一つひとつの単語は読めるし意味は分かるのに全体で何が起きてるのか分からない。なんの話をしているか分からない。どうしてこうなるんだろうと思いながら読んでもどこかで何かの作用で分からなくなる

あるよね

でも何かの作用とか言って誤魔化すのをもうやめようと思う。

全体が分からないということは、細部が分かっていない、というだけの話だということを認めよう

漫然と文章を読み進めることはできるけれど、全体を通してその文意が読み取れていないのであれば、愚直に分からない部分を分かるようにする工夫をしながら読もう

これ僕が最近立てた目標。

ブログではこのあたりの「なんとなく読み飛ばしてるとこ」「ぼんやりとしか理解できてないところ」を愚直に調べる形の読書記録をつけてみようと思う。

Contents

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たとえば、「ヤンセン主義」を調べるはじめの一歩

例えば今読んでるのはレイナルド・アレナスの『めくるめく世界』

こんな文章が出てきた

「当時、われわれ三人は厳格なヤンセン主義者だと攻撃されたものだった」

読み飛ばすと思う。ヤンセン主義者って宗教のなんかで、批難対象だったんだろってことが理解できれば十分だと判断して、そのままにしたはず。変わり者の異端者に見えたんだろ、くらいの認識で。

だけど今日から僕は「ヤンセン主義者」というものが何なのか、とりあえず簡単にでも良いから調べることにする。

調べる方法はまずインターネッツ

①検索窓に「ヤンセン」と打ち込む

ヤンセンファーマ株式会社が出てくる。これは「めくるめく世界」には関係ないだろう。除外

「ヤンセン主義」を検索

ヤンセン主義を打ち込んだ時点で

「ヤンセン主義 とは」

「ヤンセン主義 論争」

という予測キーワードが出てくる

③どちらもクリックする

いずれのキーワードにおいてもwikiの「ジャンセニスム」という言葉が出てくる。

「ジャンセニスム=ヤンセニスム=ヤンセン主義」ということらしい

wikiの中身はあとでじっくり読むことにして

「ヤンセン主義とは」と検索して出てきたトップページを俯瞰する

wikiやコトバンク、weblio辞書などがトップに並んでおり、基本的な事柄の説明はこの辺りを読めば分かりそう

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超基本的なヤンセン主義とはを抜き出す

神学者ヤンセンが主張

アウグスティヌスの教義を元に展開される宗派であり、アウグスティヌス主義とも言える

17世紀以降に流行した

フランスを中心に流行した

カトリック教会によって異端とされた

「人間の意志の力を軽視し、腐敗した人間本性の罪深さを強調した」という文章は、wiki

このあたりで誰かと会話をする妄想をする

これはただ文字情報を並べただけで、まだ自分の知識になってない

知り合いと何かの話の途中で、もしくは子どもに純粋な顔で「ヤンセン主義ってなに?」って聞かれたどう答えるか?を考える。どんな風に答えたら「分かった」と思えるだろうか

こう考えることで、学術的な文章を書くほどではないにしても「知っている」という程度の知識にまで高めることができると思う。

上の情報の中から、実際に会話上でヤンセン主義を説明するとしたら?と考えて構築する。

まずは「キリスト教の宗派の一つだったと思う」みたいな感じで答える。現実だとこの辺で「ふーん」って感じで話は終わると思うけれど、知識を得るための仮想対話者は良い質問者で、あるていど好奇心がある(ことにする)。

「なんでヤンセン主義者だと攻撃されるの?」

「カトリック教会に異端認定されてたから」

「なんで異端認定されてたの」

ここで答えられなくなる。僕の中でまだヤンセン主義者が異端認定されていた理由が分からないから。

疑問が生じたら調べる。方法はネット上の記事でも良いし、本があればなお良いけど、まずは簡単に検索でオッケー。何も知らないよりましだ。

「ヤンセン主義 なぜ異端」と検索する

yahoo知恵袋に「ジャンセニズムをカトリック教会が異端視した理由はなんですか?」という質問があることを知る。まんま僕が知りたい内容だ

期待を膨らませたところで章を区切る

疑問を素直に検索欄に打ち込み、出てきた記事を読む

↓ヤフー知恵袋のページ↓

ジャンセニスムをカトリッツク教会が異端視した理由はなぜですか?

 

ベストアンサーの冒頭に「根底にあるのは自由意志論争で、」という一文を見る。

これは頭に入れておいても良いかもしれない一文として頭の中でマークしておく。

恩寵論、自由意志論、予定説、半ペラギウス主義など、よく分からない、説明できない言葉が続々と出てくる。深入りしないことも大事。調べなきゃいけないことが無数に増える。今はとりあえず「ヤンセン主義が異端だとされた理由」が完結に分かる文を探す、が目標。

「ローマ教会から見ればヤンセンとその流れを組むジャンセニスト(ヤンセン主義者)は所詮、宗教改革グループの手先にしか見えなかった」の一文があり、「なぜ異端視されたのか?」の回答に近い気がする。

宗教改革しようとする人は、まあ、邪魔かもしれないね。今の政党の転覆をはかる勢力は、現政権にとっては邪魔者ってのと同じだよね。それが国民のためであるかどうかなんて関係なく、「自分たちの威信」が大事だよね。とにかく都合が悪い人たちだったってことかな?

けど、「どこがどう都合が悪かったのか?」という疑問に答えられていない(僕の知識では理解できていない)ので不十分。「根底にあるのは自由意志論争」という一文を理解しないでは結局のところ分からなそう、ということが分かる。ここではちょっと深入りするのはよそう。「○○論」を調べ出すと簡単に、では済まなくなること請け合い。そのうち調べよう(調べないやつ。いや調べよう今度)。

別のアンサーも見てみると(ジャンセニズムは)「人間それ自体は全く無力で愚かなものであって神様が絶対である」という文章があって、これが分かりやすい気がする。ヤンセン主義はこういう考えを持っている人たちだった。

一方ローマ教会は「人間は神様が作ってくれたものだから人間も素晴らしい」という思想だったというようなことが書かれてる。

対立していることがよく分かる。
一方では「人間無力、ろくなもんじゃねえ、神様に何とかしてもらわなきゃ話にならない(恩寵論の尻尾が見えてくるような気がする)」みたいな考え方で、もう一方では「人間すげーよだって神様が作ったんだもん」って言ってる。

そう言えばwikipediaでは「人間の意志の力を軽視し、腐敗した人間本性の罪深さを強調した」と書かれていた。なるほど、「人間ってそもそもろくなもんじゃないよね、神様に何とかしてもらわなきゃならないよね」って態度が「(本人たち曰く)正統な」カトリックには受け入れられなかった、ということか?

書籍のレビュー欄を全力で参考にする

ジャンセニズム、ヤンセン主義と検索しているうちに「ジャンセニズム 生成する異端 近世フランスにおける宗教と政治」という本があることを知る。

ジャンセニスム 生成する異端:近世フランスにおける宗教と政治

高い!とても買えない。ちょっと調べものっていう価格じゃない。から購入は諦めるけれど、レビューにけっこう長い文章が載っている。

レビューが参考になることってけっこうある。

キリスト教、もしくは宗教における「異端」ってどういうもん?っていうことが書いてある箇所があり、どういう風に「派閥」「宗派」が増えていくのかをかみ砕いて説明(考察?)してくれている。

その後の本題。ヤンセン主義のどこがどう異端だったのかについて言及されている箇所。
普通に分かりやすかったので引用しても良いかな

ごく簡単に言うと「神の力は絶対的であり、不完全な人間の努力は無力である。だからこそ、人間は謙虚に、神に寄り頼むことにすべてを賭けるべきだ」といった考え方だ。言い変えれば「人間が、自分の努力で天国に入れるなどと考えるのは、傲慢である」といった考え方だとも言える

 

さらに

ローマ教会は、これを「異端」だとしたのである。一一なぜか?

それは「人間の努力を否定するもの」となってしまっているからなのである。
これは、現実の信仰生活においても、「教会経営」の観点からも、あきらかに不都合なものであろう。

 

分かりやすい。なんか調べてきたことが結実した感がある。

「人間の努力を否定する考え方」だと見做されて、それはローマ教会の教会運営において不都合だったから、ヤンセン主義は批難され、弾圧を受けた。

とりあえずこれが答えで良いだろう。

もし誰かに「どうしてヤンセン主義者は叩かれたの?」と聞かれたら、「神は絶対なのに対して、人間は不完全で無力だって言う考え方の宗派で、人間の努力を否定する考え方だと見做されたらしいよ」って答えることにしよう。

ここまでではペラペラの理解だけど、小説の一文を理解する上では以前と全然違う

もちろんペラッペラの理解だということは分かる。

誤解ないように他人に説明する場合は、たぶん「恩寵論」と「自由意志論」というものもある程度知らなきゃ話にならないだろうってことも何となく分かる。

今のままじゃヤンセン主義=「無気力な怠け者」みたいなイメージになってしまってるかもしれないからね。

そうじゃなくて、人間ろくなもんじゃない、だから、もっと謙虚に、もっと真剣に、「神に寄り頼む」という部分を宗旨にした、これはこれで敬虔なキリスト教徒の一派だったんだろう。

色々知らないことが出てきたから本当に「ヤンセン主義」のことを知ったことにはならないと思うけれど、「めくるめく世界」の中に出てくる、「当時、われわれ三人は厳格なヤンセン主義者だと攻撃されたものだった」という文章を読む上での理解は少し上がったと思う。

同じ文章でも、単語を調べる前と後ではちょっと印象が違う。この積み重ねが大事だと思う。

この三人はなぜそう思われたのだろうか?どんな発言でそう思われたのだろうか?という問いを持って前後を読むこともできるようになる。

いやー、細かいことだけど知らない言葉を調べるって大切だなあ。

ということで、ちょっと書いてて面白かったし、これはこのブログでも続けていきたい。

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